グリースの使い方【実践編】

グリースの使い方【総論編】に引き続き、グリースの使い方【実践編】をまとめておこうと思います。【総論編】とあわせてご覧ください。

【実践編】

1.回転部分(ハブ等)に使用するグリース選定上で考慮すべき事項
①ハブやBB、ヘッドパーツの構造はグリース部の空気や水、埃が浸入し難い構造か。防水、防塵シールがしっかりしているか。
浸入しやすいと劣化がはやまり、グリース交換頻度が短くなる。また、防水、防塵シールがしっかりしていると回転抵抗が大きくなる傾向がある。

②衝撃力
スポーツ車でMTB、BMXは衝撃が比較的大きく、ROADは比較的小さい。ママチャリは子供や高校生などは乗り方が荒いので比較的衝撃力は大きく、静かに乗る方は比較的衝撃力が小さい。衝撃力が大きいと瞬間的、局所的にグリース切れが発生し発熱が生じる。衝撃力が大きいと想定される場合は、極圧性のあるグリースを選定。

③ゴム製部品(防水、防塵シールなど)、プラスチック部品への攻撃性
使用にあたり、ゴム製部品やプラスチック部品にダメージを与えるものかどうかを、製品貼付のラベルやカタログ、メーカーのWebsite、販売店、メーカーお客様窓口などで確認すべきである。ただ、自転車用と銘うって販売されているグリースの大半は、この辺の情報をメーカーが開示していないケースがほとんどだが、販売店で聞いてみるとほとんどの場合、問題があるとは聞いていないと回答される。
グリースの成分によっては、ゴムやプラスチックにダメージを与えるものがあります。例として、極圧性向上のために配合されている二硫化モリブデン(MoS2)は、ゴムにダメージを与える。二硫化モリブデンを含有しているグリースは金属部分だけで構成されているところで使うべき。周辺の構成物にも注意を払い、もし、流れ出たグリースが付着する可能性があるところにゴム製部品がある時は使用を控えるべき。
ゴムにダメージを与えるのはMoではなくて、S2の部分。したがって、有機モリブデンはゴムにダメージを与えにくい。

④増稠剤の稠度番号
ゆるい(稠度番号が小さい)グリースは回転抵抗が小さいが流れ易く、頻繁なメンテナンスが必要。また、極圧性も低い(ただし、極圧性を向上させる添加剤を含有している場合はこの限りではない)。かたい(稠度番号が大きい)グリースは逆になる。シマノのDuraGrease等自転車用として通常市販されているグリースは稠度番号が2号程度であると想定される。(シマノはグリースのパラメーターを開示していない)

⑤メンテナンス頻度、メンテナンスコスト
説明するまでもなく 頻度が少なく、コストは安いほうがよい

⑥気温
一般的に気温が高くなるほど、基油の粘度は低くなり(さらさらになる)、稠度もゆるくなる。よって 夏と冬ではグリースを変える手もある。

⑦何を優先するか
自転車の性能をアップするために回転抵抗を小さくしようとすると メンテナンス頻度が高くなり、コストアップの要因になり、相反する事項があるので、何を優先して何をあきらめるかを決める必要がある。例えば、回転抵抗を小さくすることを優先すると、稠度番号が小さいゆるいグリースを選定することになり、グリースが流失しやすい。よって、メンテナンス頻度が高くなり、コストアップに繋がる。したがって、回転抵抗を小さくすることを優先させるとコストアップは覚悟しなければならない。

2.グリースの充填量
 グリースの充填量は、古くからの自転車屋さんで聞くと玉押しをセットした時に はみ出るくらい充填すると言われる。ママチャリなどのシール構造がきちんとしていない(隙間が大きい)ハブやBB、またはヘッドパーツは、これでも良い。スポーツ車は適正なメンテナンスが実施されることを前提にして、量を減らし、適正な量としたい。

3.使用時の注意
① 充填作業は、埃や砂が少ない場所で行う。屋内が望ましい
② 必要な分だけ取り出し、余ったものは戻さない。(埃とか砂の混入防止)
③ 直接ボトルの中に指を入れない(人間の脂分の混入による劣化防止)

4.保管
 基本的には空気との接触を断ち、酸化を防ぐ
 ①グリース表面はなるべく均し、空気との接触面積を減らす
 ②キャップは必ず締め空気の浸入を防ぐ。必要に応じてジップロック等に入れ保管する
 ③グリースガンを使用すると、必要量だけ取り出せて、空気の接触面積を減らすことができる。グリースガンは工具専門店で販売されているミニグリースガンが使いやすい

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5.まとめ
以上を総合し、私なりの使い分けを下表に示す

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      見難い場合は拡大してください 

その他、表中に示していないグリースの使い分け

(1)フリーハブボディグリス(Y3B980000)
シマノ純正品、フリー用。稠度は2号程度?リチウム系? フリー部はラチェットの爪のところで極圧性が要求され、また、耐水性も必要。ワコーズ HMG-U M510でも使えるか?また、メンテ時の作業性を考えるとスプレーグリースも有か?ワコーズ SPG(稠度2号) 、科研産業 ナスカグリース(稠度2号)等
今後の宿題。

(2)内装ハブ用グリースY04120800
シマノ純正品、内装ハブ用。稠度は2号程度?リチウム系? 内装ハブ部はラチェットの爪と歯車のところで極圧性が要求され、また、耐水性も必要。ワコーズ HMG-U M510でも使えるか?
今後の宿題。
稠度が2号程度のグリースは、充填しすぎると変速性能が落ちるので、適量を心がける。
(3)ローラーブレーキ用グリースY04120400
シマノ純正品、内装ハブ用。稠度は3号程度?リチウム系?ローラーブレーキは構造上極圧性、耐水性、耐熱性が要求される。
このグリースは、色から見ると、極圧性を上げるために2硫化モリブテンが配合されていると想定される。また、このグリースは充填しすぎると回転抵抗が大きくなるので、適量を心がける。
(4)ペダルの用いるグリース
  基本的にハブと同じ思想で選定してOK。
  スポーツ車用:分解整備が可能なもの:ワコーズ HMG-U M510
      分解整備が不可なもの:ワコーズ SPG(稠度2号)
ママチャリ用:分解整備が可能なもの:ワコーズ HMG-U M520
   分解整備が不可なもの:ワコーズ SPG(稠度2号)
(5)ネジの焼付防止に用いるグリース
ステンレス、スチールネジ:普通に市販されている自転車用グリース
チタンネジ:ロックタイト シルバーアンチシーズ

6.豆知識
(1)PTFE
ポリテトラフルオロエチレン(Polytetrafluoroethylene, PTFE)とは、テトラフルオロエチレンの重合体で、フッ素原子と炭素原子のみから成るフッ化炭素樹脂である。耐薬品性、対候性が非常に高く、安定している。人体には無害。現存する物質の中で摩擦係数がもっとも小さいもののひとつ。自転車等の潤滑剤に配合されているが、身近なところでは、テフロン(Dupontの登録商標)の商品名でフライパンや衣料品に使用されている。
第2次大戦中、核原料のハンドリングのためにDUPONTが開発。安定性が高いため、半永久的にそのままの形で地球上に存在できるので、いわゆる始末にこまる物質でもある。

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(2)いわゆるテフロングリース
テフロングリースまたはテフロン入りグリースとは、普通の合成油グリースに潤滑性向上のためにPTFEを添加剤として配合したもの。自転車で使われるものとしては、フィニッシュライン、トリフロー、Super_Lubeから発売されている。価格は1000円~1500円/100g程度でシマノのデュラグリースとほとんど同価格である。また、使用感もシマノのデュラグリースと同程度である。

(3)フッ素グリース
それに対して、フッ素グリースは、PFTEと似た構造をもつフッ素オイルと増稠剤であるPTFEを混ぜたもので、テフロングリースとはまったく異なるものである。色は白色で、稠度番号が大きくても粘り気はさほど感じない。フッ素オイルによる摩擦低減効果にプラスして増稠剤のPTFEが固体潤滑剤として働き 抜群の潤滑効果を得られる。潤滑性能は、グリースとして最高であると推測される。稠度番号が3号の通常のグリースでは、回転抵抗が非常に大きいが、フッ素グリースは稠度番号が3号でも回転抵抗は小さい。また、水、他の溶剤と混じりにくので耐水性(水と混じり変質劣化しにくい)は良好である。
欠点としては、価格が7000円~15000円/100gでテフロングリースの約10倍と非常に高価であること。また、工業用なので、最小販売数量が200g~1Kgと量が多く個人では購入しにくいこと。他に、粘着性が弱いので水で流れやすいこと(防水性は弱い)。増稠剤であるPTFEが金属表面のでこぼこに入り込み 完全に除去できないことがある。
よく、セラミックベアリングにはフッ素グリースが良いと言われる。これは、セラミックの構造上、表面にディンプル(でこぼこ)が金属表面より、多数あり(ピンポン玉がスチールボールとするとセラミックボールはゴルフボールと考えればよい)そこに、PTFE粒子がトラップされ、摩擦抵抗が激減すると考えられる。
フッ素グリースは住鉱潤滑油(SUMICO)のF950、F932M・No.1やソルベイ ソレクシス(株)のフォンブリンOT20、DupontのクライトックスGPLグリースが、カタログスペック上は自転車用途としては使えると想定される。
 フッ素グリースの購入は、住鉱潤滑油やフォンブリンは理化学機器の通販サイトで、クライトックスは総代理店である丸和物産のサイトで問合せをすると購入方法を教えてくれる。
 フッ素グリースは価格がデュラグリース並ならばhubやBBなど比較的水が入り込みにくい場所で是非とも使いたいグリースである。
 私も、試しに、フォンブリンとクライトックスを使用してみたことがるが回転は非常に軽くなった。

(4)グリースのパラメーター非公開について
 自動車用、工業用グリースは、たいていの場合、基油の粘度、稠度番号、耐水性、耐熱性、ゴム・プラスチックのダメージなどのパラメーターをカタログやWebで公開している。また、公開されていなくても、問合せをすれば、たいていは教えて貰える。しかし、自転車用のグリースはその辺の情報がなにも公開されていないことが普通である。これでは、正しいグリースの選定は不可能である。結局は、ネット上の情報を参考に自分でたくさんの種類を試すことになり、時間とお金の無駄遣いとなる。何とか公開してほしいものである。
 グリースはこれらの情報がわかると実は簡単に作れてしまうものであるので、メーカーとしては、これらの情報を非開示するとで、商品の価格競争力を保とうとしていることは、用意に想像できるが、このままでは、自転車そのものの魅力を殺いでしまい、自転車産業の衰退に繋がるのではと危惧をしてしまう。
 シマノなど部品メーカが情報を開示しないことも疑問がのこる。部品の評価等は純正のデュラグリースで行っているので、製品保証の問題やPL法の問題の絡みでデュラグリース以外はユーザーに使わせたくないのはわからんではないが、せめて上記のパラメーターぐらいは公開してほしいものである。
やはり、ユーザー自身が賢くなって情報開示を要求しつづけるべきであろう。

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この記事へのコメント

Q
2017年08月12日 09:55
モリブデンはゴム、プラスチックへの攻撃性が云々と書かれてますが、製品には使用しても問題ない旨を記載してるのもありますので一絡げで纏めるのは止めていただきたいです。
記事の内容自体は粗在ってると思われますが、情報が古い、他の方のブログと内容が重複、等ございますので改定と引用元の公開をお願いします。

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